Klebsiella pneumoniae 〔肺炎桿菌〕

Klebsiella pneumoniae 〔肺炎桿菌〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 比較的大きなグラム陰性桿菌。莢膜がこのように見えることもある.
  • 菌の両端がよく染まり、安全ピンの様に見える。他の腸内細菌との区別は難しい。
頻度
★★★
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CEZ OR CTM
抗菌薬の待てない人: CMZ OR MEPM
ポイント
  • Theodor Albrecht Edwin Klebs (1834 – 1913)への敬意を以って属名がつけられている.が,彼が単離に成功した訳ではなく,肺炎の起因菌として100年以上前に同定されたのが最初である.
  • ヒトの腸管に常在し,尿路・胆管・肺炎・膿瘍と様々な感染症を起こす.また,染色体上にClass Aのβラクタマーゼをデフォルトで装備し,ABPC は自然耐性である.
  • 主要な病原因子はLPSと莢膜であり,特にK1,K2といった特殊な粘液過剰産生菌は病原性が高い.[1]
  • 院内感染・市中感染ともに発生させるポテンシャルを持ち,こと菌血症に関しては院内発症の頻度が大きい.が,地域により多少異なるようである.
  • 本菌の菌血症は特にアジア地域ではアルコール依存症と強い相関関係にある.また,恐ろしく侵襲的な敗血症性肝膿瘍がアジア,とくに台湾で顕著に多く見られている.[2]
  • この特徴は市中肺炎に関しても同様で,『アルコール依存症の肺炎』としてのK.pneumoniae感染はアジア・南アフリカ以外では高頻度でない.[2]
  • KPC やESBL といった多彩な耐性機序を示す事が知られており,日本においては2010年でKPCは非常に稀.ESBLはTEM型及びSHV型を中心に4.7%となっている.[3]
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  Emerg Infect Dis. 2002 Feb; 8(2): 160–166.
  3. [3]  J Med Microb Diagn 2013, 2:3
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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