Campylobacter fetus〔中絶菌:畜産業界での別名〕

Campylobacter fetus〔中絶菌:畜産業界での別名〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 言われないと解らない程度には小型で細くて染色性が悪い。
  • ゴミと勘違いしてしまうので、できるだけ背景の薄い所でみる。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CTRX OR CPFX
抗菌薬の待てない人: MEPN±GM
この場合、菌血症の発症があり、点滴抗生剤の使用を考慮したほうが良い。特にfetusは腸管外感染症(髄膜炎や感染性大動脈瘤も含む)を起こしやすい種類のCampylobacterであり、厳密な感染巣検索(血液培養の反復、心エコー)は考慮する。
エラー注意
  • ゴミと勘違いしてしまうので、できるだけ背景の薄い所でみる。技師さんでさえ、見逃しうる。
ポイント
  • Campylobacterは、ヒトへの病原性という点に関して大きく2つのグループに分けられる. 腸管内感染を起こす菌である. 代表的な下痢原因菌であるC. jejuniはCampylobacterによる疾患の80~90%はこのグループによる。 もう一方は腸管外感染(血流感染など)を起こす菌であり、こちらの代表が本菌、C. fetusである.。
  • C. fetusは牛ならびに羊が主要なリザーバーであり、人間への感染は多くがこれら畜産動物を経由したものと考えられている。[1]
  • Fetusという命名はこの菌が牛などの外性器周辺に感染を起こした場合、これらの動物における流産や中絶の原因となりやすいという特徴からである。人間でもこの特徴は発揮されてしまうことが間々あり、1947年にはすでに症例報告が行われている。[1]
  • 本菌による全身感染は、24~41%では特定のFocusを形成することがない。[2]
  • 感染巣は多岐にわたり、関節炎・髄膜炎・硬膜下膿瘍・骨髄炎・肺膿瘍などの報告がある。ただ、いずれもこれらをPrimary focusとして菌血症を呈したというよりは、菌血症の結果、これらの播種病変を呈した、と考察するほうが合理的であるように見える。[1]
  • 治療において、本菌は多くの場合においてアンピシリン、3rd セフェム、カルバペネムへの感受性が良好である。ニューキノロンは33%が耐性とのデータもあり、確定治療にはあまり向かないと考えるべきであろう。[2]
  • 血液培養からのらせん菌検出では,Campylobacterの他にもHelicobacter, Arcobacter, Anaerobiospirillum, Desulfovibrio, Brachyspiraといったらせん菌も鑑別だが,Gram染色での鑑別はマニアックかつ深淵.参考になりそうなスライドをこっそり張っておく.
  • コロニーにこれといった特徴はないが、培養条件が37度程度と比較的低音を好む性質にあることは注意に値する。:コロニー画像あり。
参考画像
参考文献
  1. [1]  Clinical Infectious Diseases, Volume 58, Issue 11, 1 June 2014, Pages 1579–1586,
  2. [2]  Clin Infect Dis , 2008, vol. 47 (pg. 790-6)
  3. [3]  参考スライド
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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