肺炎球菌:ムコイド型〔Streptococcus pneumoniae〕

肺炎球菌:ムコイド型〔Streptococcus pneumoniae〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
双球菌の形態を取ることが多い。
染色の特徴
  • よくみると菌体の周りに薄く赤い物質(ムコイド)をまとっている
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG OR ABPC
抗菌薬の待てない人: CTRX OR VCM
髄膜炎の場合は感受性の基準が異なるので注意
ポイント
  • 肺炎球菌のうち、莢膜物質の過剰産生を起こしている株である。頻度は検体や対象患者の年齢によって報告が様々であるが、外来患者に限れば肺炎球菌の5%程度となるようである[1]。
  • ムコイドと呼ばれる莢膜成分は肺炎球菌においてはCポリサッカライドを主成分としている。血清型は3型が大半である。が、この血清型は肺炎球菌ワクチンの13価・23価いずれにも含有されているため、今後は11A、35Bなどの血清型増加してくる可能性がある。[2]
  • 非ムコイド型との違いに関しては諸説言われていたが、総じてムコイド型のほうが、①炎症反応は高くなりがちで、②高齢者に生じやすく、③ペニシリン系を含む抗菌薬感受性が良い傾向にある。[1]
  • 肺炎などでは死亡率に有意差を出した研究は見つからなかったが、中耳炎においてはこのような形態の肺炎球菌は『ムコーズス菌』などと呼称され、難治性の経過となることが多いようである[3]。
  • コロニーには中央陥凹は見られにくい:参考画像
参考画像
参考文献
  1. [1]  Ann Lab Med 2015; 35: 410-5
  2. [2]  PLoS One. 2015; 10(4): e0125636.
  3. [3]  Otology Japan 10(2), 89-94, 2000-05-25
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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