Enterobacter cloacae〔エンテロバクター・クロアカ〕

Enterobacter cloacae〔エンテロバクター・クロアカ〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 菌の両端が特によく染色され、安全ピンのように見える。
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CMZ OR CTM
抗菌薬の待てない人: MEPM ± GM OR CFPM ± GM
院内感染では抗生剤は緑膿菌レベルの警戒が必要で、重症の場合にはβラクタムにアミノグリコシドの併用が推奨される。
エラー注意
  • ほかの腸内細菌科との区別は困難である
ポイント
  • 腸内細菌科に属し,aerogenes,sakazakiiとともにEnterobacter感染症の多くを占めるポピュラーな種.
  • 健常者への感染は稀ながら,院内感染ではVAPや熱傷部感染,CRBSIを始めとする各種デバイス感染,髄膜炎とマルチな活躍を見せる.
  • 未熟児に壊死性腸炎や髄膜炎を起こすことでも有名で、 NICUでのアウトブレイクは悪夢の光景。
  • 薬剤耐性が強い。SPACEのEとは彼のことで、染色体にすり込まれたAmpC型βラクタマーゼ、プラスミド経由でのESBLs、場合によってはカルバペネマーゼまで産生する。
  • な お,AmpC型とは彼らに生まれながらのアンピシリン,第1,第2世代セフェム耐性を付与し,過剰産生により第3世代セフェムへの耐性を獲得させるβラク タマーゼである.恐ろしいのは抗生剤の使用により過剰産生が誘発され(1万~1000万匹に1匹くらいの頻度らしいが,使用した抗生剤により若干異な る.),『はじめは感受性だったのにいつの間にか耐性に..』という事態が起こりうる.[1]
  • 誘導しやすい抗生剤はペニシリン,アンピシリン,セファゾリン > セファマイシン,カルバペネム > セフォタキシム,セフトリアキソン,セフェピム,セフタジジム,アズトレオナム [2]
  • ちなみに,細菌がペニシリンを世界ではじめて壊した酵素がAmpC型であり,大腸菌がもっていたのだとか.[3]構造図を参考図に示しておく.
参考画像
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  抗菌薬の考え方,使い方Ver.3 岩田健太郎,宮入烈 中外医学社
  3. [3]  Clin Microbiol Rev. 2009 Jan;22(1):161-82, Table of Contents. doi: 10.1128/CMR.00036-08.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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