Morganella morganii〔モルガネラ〕

Morganella morganii〔モルガネラ〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 比較的大きなグラム陰性桿菌。
  • 安全ピンのように両端がよく染まる
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CTRX
抗菌薬の待てない人: CFPM OR MEPM OR PIPC/TAZ
エラー注意
  • 他の腸内細菌群とは区別困難
  • 第1世代セファロスポリンは耐性が非常に多い
ポイント
  • 腸内細菌群に属する菌種であり,Proteus属,Providencia属と多くの特徴を共有するProteeaeの1員である.基本的には腸管内にも存在するが,環境中やその他動物の常在菌叢を形成している.
  • 1906年にH de R Morganにて小児の夏季の下痢症の起因菌として報告された.[1]当時はBacillus morgan との命名となっていたが,1934年にMorganella属として登録され,現在に至るまでにMorganella morganiiは2種のsubspecies (morganii と sibonii) が同定されている.
  • 尿路感染がメジャーであるものの,院内感染の,とくに術後感染症として出現することが比較的多く,その性質からか複数菌菌血症の1員となることが多い傾向にある.[2]
  • 変わった所では,蛇の口腔内細菌叢を形成しているため,蛇咬傷後の膿瘍からはかなり高頻度に検出されるようである.[3]
  • 魚にも多く常在するようで,鮮魚の流通過程で保存が悪いと強力にヒスタミン産生を起こし,スコンブロイド中毒の原因ともなる.[4]
  • 薬剤耐性は問題となることが多い.というのも,本菌はSerratia marcescens,やCitrobacter freundiiと同様に染色体型のAmpCβラクタマーゼを持っているからである.第1~2世代のセファロスポリンには耐性を示すことが多く,第3世代の長期使用はAmpC過剰産生を誘導する.抗生剤選択は予定治療期間を以って慎重に決められたい.[5]
参考文献
  1. [1]  Br Med J. 1906 Apr 21; 1(2364): 908–912.
  2. [2]  Infect Control. 1984 Mar;5(3):131-7.
  3. [3]  Toxicon. 1994 Jun;32(6):743-8.
  4. [4]  Int J Food Microbiol. 1996 Jan;28(3):411-8.
  5. [5]  Antimicrob. Agents Chemother. March 2008 vol. 52 no. 3 995-1000
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university