Saccharomyces cerevisiae 〔ビール酵母〕

Saccharomyces cerevisiae 〔ビール酵母〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • GPC-hugeと表現されるほど巨大なGPCとして観察される。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 一見Candidaだが,菌名判明時点でVoriconazoleにするのがよいやも.
抗菌薬の待てない人: AmpB + FLCZ 〔Ref, 4より〕
ポイント
  • 酵母である.糖を分解してアルコールに変化させる能力があり,近縁種はパン酵母“baker's yeast”・日本酒酵母・ビール酵母“brewer's yeast”として活躍している.
  • 基本的には毒性は無いとされているが,かなり限定的な状況では侵襲性真菌感染となることが報告されている.
  • 米国で有名なのはProbioticsによる感染症である.CDADなどの治療の際に使用されているProbiotics〔Amazonで購入可能である.〕に含まれるsaccharomyces boulardiiという本菌の亜種が原因となり,主にCV-catheterをエントリーとした侵襲性感染を起こす事が知られている.実際にICUでSaccharomyces cerevisiaeの菌血症が発生した3例のケースシリーズでは,このProbioticsの使用が唯一の危険因子であった.[1]
  • 臨床的にCandida血症との判別はほぼ不可能であり,それに準じたケアが必要となる.本菌はアムホテリシンBおよびアゾールに低感受性であることが多いが,全体としても予後は良好である.
  • 慢性の呼吸器疾患を有する患者では7%が気道内のコロナイズがあり,咽頭・便・尿・会陰部にはそれぞれ16%,23%,10%,20%で保菌がある.ただし,これらについては常在であるのか通過菌であるのかは区別ができていない.[2]
  • 膣内で異常繁殖し,Candida膣症によく似た症状を形成することもあるようである.[3]
  • なお,MALDI-TOF〔質量分析〕による同定は本菌に関しては非常に研究が進んでおり,高い信頼性がある.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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