Mycoplasma hominis〔なにこれ見えない〕

Mycoplasma hominis〔なにこれ見えない〕
膿汁
染色の特徴
  • コロニー染色ではグラム陰性の顆粒が見えることがある。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: MINO、DOXY、CLDM
抗菌薬の待てない人: CPFX
細胞壁を欠くため、βラクタムは無効である。
また、Mycoplasma pneumioniaeと異なり、マクロライドは概ね無効。
エラー注意
  • 事前の抗菌薬投与などを要確認
ポイント
  • Genital mycoplsmaと称されるマイコプラズマ属の一種で、Mycplasma genitalium、Ureaplasmaなどが近縁。外性器周辺の感染症の原因となる他、最小の自由生活生物の一つと位置づけられる。
  • 外性器周辺に存在することは認知されており、ブラジルで生殖可能年齢の女性をスクリーニングしたところ、実に11.3%が保菌していたという報告もある[1]。が、病原性に関しては近年まであまり確実な報告はなされていなかったが、微生物同定の主力がPCRになってきたことで報告が増加しつつある。
  • M. hominisは他のGenital mycoplasmaと異なり、遺伝子的な手法を用いずとも検出できる可能性がある。ただ、5%炭酸ガス、35℃でという環境で、血液寒天培地上にコロニーを形成するというものだが、発育速度が遅く、検体が適した条件での培養の対象にならないことが多いことから、検出感度は決して高くない。血液培養でも検出し得るが、キットに配合される抗凝固薬で発育が阻害されやすいため、あまりアテにはしないほうが良いであろう。
  • M. hominisはこれらGenital mycoplasmaの中でも特に全身感染症との関連が強いことが知られている。
  • 報告が多いのは術後の創部感染で、一見婦人科臓器と関連が薄そうな心臓血管手術後の胸骨骨髄炎などの原因となりうる他、上記のごとく菌血症としても発現し、中枢神経感染や関節炎なども起こすことがある。[2]
  • 薬剤感受性はマクロライドが無効であるという点がMycoplasma pnaumoniaeと大きく異なる。(アミノグリコシドやS/Tも無効なことが多い。)テトラサイクリン系には多くは感受性であるが、tetMという遺伝子により耐性を獲得する例も知られている。ニューキノロンは多くは感受性であるが、中でもモキシフロキサシンが最も活性が強いとされる。[2.3]
  • 非常に小さいコロニーの画像、コロニーを染色した際のグラム陰性の顆粒を参考画像に載せておく。
参考画像
参考文献
  1. [1]  日本臨床微生物学雑誌 Vol. 24 No. 3 2014. 25
  2. [2]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 8th edi
  3. [3]  Up to date Mycoplasma hominis and Ureaplasma urealyticum infections 2017,11,02
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university